2月22日に開催した政府ヒアリングでの主催市民団体からの質問に対する回答が出揃
いましたので共有します。
質問は廃止アクション事務局と土地規制法を廃止にする全国自治体議員団が作成
し、全部で大項目が4、項目が36あります(添付参照)。ヒアリング当日は質問を三
分の1に絞り込み口頭での回答を求めました。今回はそれ以外の文書回答です。
多くが検討中との回答ですが、明示的な回答で重要な以下の2点を抜粋し、続けて
Q&A形式で当事務局の仲松正人弁護士に解説してもらいました。現場の警察による
「阻害行為」の事例に基づいた市民の行動規制についてと、思想・信条調査について
です。
質問1-7
機能阻害行為として勧告がなされていないのに、現場で警察官が「これは機能阻害行為
だ」として行動を制限しないようにするための制度的担保はどうするのか。
回答
重要土地等調査法に規定する勧告等の権限は、全て内閣総理大臣の権限とされており、
この権限を警察が行使することはできないので、御質問のような場面は全く想定されない。
質問2-5
重要施設に対する機能阻害行為としての③坑道の掘削は、それ自体では当該施設への
攻撃ではない。坑道を掘削しても、その坑道を施設攻撃のために利用するとは確定しない。
これを阻害行為とする 理由は何か。仮に、坑道掘削が施設の基盤としての機能を阻害す
る行為(の準備行為)というためには、その坑道が施設の基盤としての機能を阻害する
目的で掘削されているということが分からなければならないのであり、その目的を判定するた
めには、氏名・名称・住所や国籍、あるいは公簿情報や現況調査だけでは足りない。行為
者の思想信条を含むプライバシー情報まで調査しないといけないはずであるが、どうか。 これ
らは含まないというのであれば、 政令においてそれを明示すべきと考えるが、どうか。
回答
本法に基づく土地等利用状況調査において、思想・信条に係る情報を収集することはな
い。また、この旨を殊更に政令に規定する理由及び必要性はない。
【仲松弁護士の解説】
Q:質問1-7への回答について
回答では、勧告等の権限は内閣総理にあるので警察官が勧告等の権限を行使することは
ないとしています。そんなことは他の犯罪に相当する行為もそうであって、容疑が確定しない
段階であっても犯罪を構成する行為の類型にしたがって現場の警察は規制するのではない
かと思うのですがどうでしょう。
A:
現場で警察がそのようなことをするはずがないという回答ですが、それは現場を知らない(あ
るいは現場のことを考えたくない、考えるとこの法律を実施できない)事務官僚の願望(幻
想)にすぎません。辺野古新基地建設の土砂搬入・搬出の現場である安和桟橋や塩川港
(添付写真)などの実態もそうですし、先日判決があった札幌での安倍演説へのやじに対
する警察の介入はその典型です。
土地規制法的には内閣総理大臣が機能阻害行為と認定しなければ勧告→命令→犯罪
にはなりませんが、警察は、現場で、「これは機能阻害行為になるぞ」と考え(本当いえば、
考えなくても弾圧目的で)、介入してくるのは目に見えていると思います。介入されれば、今
回の札幌事件のように後で裁判でその違法を確認することは可能ですが、それでは遅い。表
現の自由の行使は、まさにその行使の場で保障されなければならないのであり、後で介入が
違法とされても取りかえしがつかない。また、運動に萎縮をもたらす。だから、ヒアリングでは、
現場でそのようにならない制度的保障を求めたわけです。回答は、何の保障にもなりません。
Q:質問2-5への回答について
回答では明確に「土地等利用状況調査において、思想・信条に係る情報を収集することは
ない。また、この旨を殊更に政令に規定する理由及び必要性はない」と答えています。これは
坑道掘削だけではなく、具体的な機能阻害行為にあたるとされる他の行為、例えば「高所
からの継続的な監視・盗聴等」もそうですし、具体的な行為の実行だけでなく「阻害する行
為の用に供する明らかなおそれ」がある場合も当てはまるわけですね。回答では「思想・信条
に係る情報を収集することはない」と明言していますが、ではいかなる情報がかかる行為が機
能を阻害する行為であるとの判断を裏付ける情報になりうるのか全くもって不可解です。
A:
思想信条やプライバシーに渡る調査はしないという点ですが、私のブックレットにも書きましたが、
政府はそれが土地等利用調査のためであれば調査対象になることを認めています。6月8
日参院内閣委員会での山添議員に対する木村政府参考人の以下の答弁です。(速記
録(未定稿)62頁)
(山添議員)調査する内容、対象事項についてはいかがでしょうか。例えばその利用者なり、
あるいはそこを使っている人ですね、その職業や収入、資産状況、親族関係や交友関係、活
動歴や、あるいはSNSなどネット上での発信、こうしたものは調査対象に入りますか。
(木村参考人)この本法案に基づきます調査は、あくまでも土地等の利用について調査をさ
せていただくというものでございますので、今御指摘、種々ございましたけれども、それが土地の
利用と直接関係なければ、対象にはならないということでございます。以上でございます。
(山添議員)そのような限定は法律上はどこにも書かれていません。関係するかどうかを判
断するのは調査する側でしょうから、調査をした上で関係するかどうかという判断をされていく
ことになるんでしょう。
私たちは当初から思想信条に渡る調査をしなければ機能阻害のおそれは判断できないとい
うことを問題にしていますが、この答弁は、政府もそれを否定できないという証拠です。なので、
前回のヒアリングでも質問事項に入れました。今回の回答は「嘘」です。
以上
ヒアリングの報告は一つ前のブログ掲載記事をご覧ください。<この記事を読む>
【資料】(ダウンロード)
◆2022年2月22日ヒアリング○回答(質問1)(PDF 71KB)
◆2022年2月22日ヒアリング○回答(質問2、3)(PDF 98KB)
◆市民と国会議員共同ヒアリング質問事項(最終2022年2月15日)(PDF 235KB)